第三話 縁結びのネコ

 

失恋して傷心の中、毎日笑う事なく沈んだ気持ちで過ごしていました。

ふさぎ込んだ私を心配した友人が「ペットでも飼えば?」と提案してくれて、どこにも出かけたがらない私を無理やりペットショップめぐりに連れ出しました。

 

それでもなかなか気分が乗らなかった私でしたが、ペットショップではなく、保護猫や保護犬の里親を探している施設を訪れた時、その子と出会いました。

真っ黒な保護猫でした。出会った瞬間、「私はこの子と暮らすんだ」と直感しました。

小柄で細身でしなやかな身体つきが印象的で、大きな目がキラキラ輝いている子でした。

 

即決でその子を引き取る事にして、家に連れて帰りました。

ユメと名付け、毎日可愛がりました。ユメも私によく懐き、甘えてきました。

気ままに外へ出かける事や、気まぐれに不機嫌になる事はなく、いつも甘えん坊でした。

 

毎日仕事から帰るとユメが待っていてくれる、そう思うと寂しさが紛れて、私は次第に元気になりました。

ユメが可愛くて可愛くて仕方なく、写真や動画を沢山撮って、スマートフォンに保存したり写真立てに入れてデスクに飾ったりするようになりました。

 

そんな私に声をかけてくれた男性がいました。

「猫、飼ってるんですか?可愛いですね」

そう声をかけてくれたのは、会社の同僚でした。それまであまり言葉を交わした事のない人だったのですが「僕も猫飼ってて、猫好きなんですよ」と話しかけてくれてから、よく猫の話で盛り上がるようになりました。

 

そして一緒に食事に行ったり、互いの家を行き来するような間柄になりました。

彼のユメへの眼差しがとても優しく、また、人見知りしがちで、特に男性が苦手なユメが彼にとても懐いたため、私も彼に好意を抱くようになっていました。

 

彼と仲良くなり、そして、私たちは恋人同士になりました。

猫同士の相性が合うかどうか心配ではありましたが、引き合わせてみたらケンカする事なく馴染んだので、一緒に暮らし始めました。

 

ユメが私と彼を引き合わせたキューピッドになってくれました。

失恋によって男性不信と言っても過言ではないくらい、男性と近い関係になる事に抵抗ができてしまっていたのですが、猫たちに優しく接する彼の姿は私に安心感を与えてくれました。実際、彼と一緒にいるととても心が安らぎます。

 

ユメが引き合わせてくれたこの縁を大切にしていこうと、私は小さな黒猫を撫でながら「ありがとね」と呟きました。

 

 

うちの子記念日普及協会